下記は 陳蘭琦による新聞掲載文です。
中国の春節(日本の旧正月)
 中国では、春節(旧正月)が近づくと、伝統行事のため忙しくなります。年賀状や春節用のお菓子、肉類などを買い、新しい洋服を準備し、大掃除をします。百貨店、食品店は深夜まで営業し、中国各地や海外で仕事をしている人も、お土産を持って実家へ帰ります。中国の鉄道や飛行機などの交通は一年中で最も混み、中国全土があわただしい雰囲気に包まれます。
 中国は広く、多くの民族が住んでいますので、春節の形式も地方によって異なり、様々な特徴があります。漢民族は大体南北二つに分けられますが、ここでは中国の華北地区天津の春節に見られる多彩な民俗文化に視点をおき、簡単な紹介をします。
 春節の前“腊月初八”(旧暦12月8日)は“腊八粥(ラーバージョ)”(8種類以上の豆と蓮根を煮たもの)を食べ、春節の前夜に食べる“腊八酢(ラーバーツゥ)”(ニンニクの皮を剥いてお酢の中に漬け込んだもの)の仕込をします。24日は大掃除、25日は年画を貼り、26日、27日は肉を準備します。28の日は饅頭を作り、29日の日は部屋の入り口と窓などに“福”の字を逆さまにしたものや“対聯(ドゥイリェン)”(左右に言葉を書いたもの)、赤紙の切り絵などを貼ります。書の内容は“事々如意”など人生の楽しい言葉です。30日は“合家歓楽”の日。春節前夜の大晦日は家族で三鮮餃子を“腊八酢”に浸して食べます。その年の思わしくないことを餃子に包んで食べてしまうという意味があります。夜は家族で春節文芸のテレビ番組を観ます(日本の紅白歌合戦と同じようなもの)。12時になると鐘が鳴り、街や道路、住宅の玄関、窓などから爆竹、花火が一斉に鳴り響き、色とりどりの閃光が街を染め、新しい一年を迎えます。
 春節は皆が新しい洋服を着て、“新年好!新年快楽!”と新年の挨拶をします。その日は素餃子(肉が入っていない餃子)を食べるのですが、これには新年が平安無事になるという意味があります。この日はまた、結婚している息子が嫁を連れて実家に帰り、両親に挨拶します。2日の日はラーメンを食べます。この日は結婚している娘が夫を連れて実家に帰り、両親に挨拶をします。3日、4日の日は親戚、友人、仕事仲間などに挨拶回りをします。5日の日は人間関係で嫌なことを餃子の中に入れ、煮て食べるという風習があります。この日はまた七時になるとあちらこちらで一斉に爆竹の音が響き渡ります。これは“破五(ポゥウー)”と呼ばれているものです。 
 春節には子供たちはお年玉をもらうなど、一年の中で一番楽しいときです。私の幼年時代は春節が近づくと、指折り数えてワクワクしたものです。春節には、新しい洋服やマフラー、靴等でお洒落して、小さな提灯を持って、あちこちを漫歩しました。提灯はガラスで作ってあり、様々な模様が描かれていて、ロウソクの灯りがその模様を道や壁に映し出してとてもきれいです。風が吹いて炎がゆらいだり小さくなると、映し出された模様もそれに合わせて変化し、あたかも風を見ているような趣があります。子供たちは、大晦日から正月の朝まで爆竹を鳴らして遊び、それは今も変わりませんが、残念ながら、提灯の遊びはだんだんなくなりました。現代の子供は、代わりにパソコンやデジカメなどで遊んでいます。
 大晦日から1月15日まで、公園、公民館、文化館などの場所では龍踊(じゃおどり)や獅子舞が見られ、画家、書道家が水墨画や書道をかき、歌手、役者などは演技を披露し、クイズやパズルなどの遊びをして楽しいひと時を過ごします。15日には家族で“圓霄(えんしょう)”を食べます。圓霄は丸い餅で、中にはいろいろなものが入っています。この日は全国各地で圓霄文芸コンサートが開催されます。このようにして春節は終わり、皆は幸福を祈りつつ、気持ちを新たにして、日常の生活に戻っていきます。
簡筆寒舎     
陳蘭琦     
   

日本のお正月
 日本の文化やいろいろな行事の多くは中国から来ました。七世紀「飛鳥時代」には、賢い聖徳太子が日本の留学生を中国へ派遣しました。中国で勉強した日本人たちは日本に帰って、中国の文化、政治、建築など、様々なことを伝えました。その中の一部はもうなくなりましたが、正月の祝い事は今も続いています。
 正月の前は中国と同じように、商店や会社は大変忙しく、家庭も買い物や大掃除であわただしくなります。大晦日には家族そろって蕎麦を食べ、紅白歌合戦などのテレビ番組を見ます。夜の12時になると、除夜の鐘が鳴り、たくさんの人がお寺や神社にお参りに行きます。お正月には家の入り口に門松やしめ縄を飾り、おせち料理を食べ、きれいな着物を着て神社やお寺に初詣に行く人も多い。
 私は1990年に来日し、東京で生活しています。日本の正月は中国のように、にぎやかではありません。日本人は正月になると田舎へ帰る人が多いので、住宅団地や商店街はとても静かになります。夜になると、とても寂しい感じがします。親切な日本人の友たちが、浅草や中華街へ私を遊びに連れて行ってくれました。あの辺りは賑やかで色々な店が開いていて、お正月の雰囲気があります。私は人形など、伝統的な日本の工芸品を買いました。そのとき買った人形は、中国の天津に持って帰り、今も実家に飾ってあります。それを見るといつも、日本の正月のことを思い出して楽しくなります。
 現在、日本で水墨画教室を開いていますが、日中の文化についての話題も多く、勉強になります。昨年は教室の皆さんが集まって新年会を開き、一緒に水墨画を描いて、大変楽しいひと時を過ごしました。今度の新年会も楽しみです!!
 皆様はとても優しくて親切で、いろいろなプレゼントをいただき、深く感謝しています。 

写於寒舎     
陳蘭琦